03








それは俺の自己満足だろうけど、俺が持っている、これ以上は増えることはないけれど、出来る限り薄れないように、ねじ曲げないようにしてずっと持っていたい温かなものを、まるでそんなものを容れておく器のありかを始めから知らないような顔でいる子供に、どうしたら渡せるだろう。

俺が差し出したものを子供は手を差し出して受け取ってくれるけれど、ずっと手に持ってはいられない。手に持ったものが何か分かる前に子供は別のものを手にしなくてはいけない。

子供には俺が渡したいと思っているものなど必要ではないかもしれない。
でも、自己満足でいい、俺は渡したい。

俺がどんなに探しても、子供にそんなものを容れておく器を見つけることは出来ないかもしれない。
そもそも子供は器の形も大きさも知らないというのだから。

器が見つからないのなら、いっそのこと子供自身を器にして俺の渡したい温かなものを受け取ってくれないだろうか。
子供の知る方法として最も単純で手っ取り早いであろう、生命維持に必要な食事という行為でなら、器など要らない、糧は直接子供の体内に送り込まれ、吸収され、余計なものは都合よく排除されるのだから。

あぁ俺はこんなに単純で便利で殆どの動物が持っているシステムを今の今まで何故思い出さなかったのか。
俺が渡したいと思っている温かなものだけでなく、子供は俺の中から必要なものを自然のうちに受け取ることができるだろう。

もしかすると引きちぎられ、咀嚼され、溶かされ完全に形を失って、何も吸収されぬまま、全て余計なものとして排除されるかもしれないけれど、自己満足でいいんだ、俺はこの子供に捕食されたい。

これが浅はかな自分に今思いつく一つの方法。