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“ガン・アーチャー”
 アリオスの援護機である新たな機体を前に途方に暮れる思いだ。
 超兵だったソーマ・ピーリスと対峙した時、明らかに圧倒されていた自分。
 アレルヤは未だアリオスの能力を完全に発揮し切れていない自分を歯がゆく思う。
 脳量子波は自分が超兵であったことを示すもので、忌まわしく思っていたものなのに、自分という存在をひたすらに守るハレルヤの存在を、アリオスガンダムに乗るマイスターに求められる高い能力を、そしてマリーと自分の間にあった唯一のコミュニケーションの方法だったそれを、自分は失ってからやっと気づいたのだ。
 それらに自分がどれだけ支えられていたのか。
 凶暴性を持つ自分の中のもう一つの人格、戦争根絶という夢想とも言えるような目標、愛する人を仲間を守る手立てもなく、離ればなれとなり、時には引き金すら引いた。
 自分で選んできたことなにのに全てを肯定することも出来ない。都合の良いことを言っていると分かっている自分はいつも気がつくのが遅すぎる。それでも今、望まずにはいられない。
 自分はなんと勝手な生き物だろう。



 不意に生じた激しい頭痛。平衡感覚が危ない。思わずしゃがみ込んだ床に足が着く感覚が薄れていく。
 内から外から声がする。自分と同じ声。
 自分と世界との距離が遠くなる。
 絶え間なく変化し形を変える雲がちぎれるように、音もなくゆっくりと、いつの間にか。
 僕は自分の内側にいる。

 スーツ越しに床を感じる足の裏。目の前にあるものの距離感。
 自分の内側にあるものを強く感じる。
 自分と世界とが触れ合う生々しい感触。
 唇が笑みの形に歪む。



『ハレルヤ』
「あぁ」
『ハレルヤ』
「何だよ」
『ハレルヤ、君の名前』
「あぁ、何当たり前のこと言ってんだよ」
『うん。でも、僕は神さまに祈ったことはないけれど、今この気持ちを伝える相手はやっぱり神さまなんだ』
「何言ってんだ?」
『君がまたここにいることが、僕は嬉しい』
「はっ、相変わらずつまんねーこと言いやがる」
『ハレルヤ』
「だから何だってんだよ」
『ハレルヤ、君がここにいること、君の存在に感謝します。…ハレルヤ』
「今さら何言ってんだ、お前がいて俺がいる。これからも。…アレルヤ」