『ブレイク・ピラー』から4か月、満身創痍の状態だったソレスタルビーイング、プトレマイオスはようやく態勢を整えた。 そして二つ目の大型レーザー兵器…メメントモリの破壊ミッションを終えた彼らは、その戦いの火の鎮まる間もなく、再びアロウズ艦隊に捕捉された。 出撃準備の指示が出され、刹那はティエリアと別れるとダブルオーガンダムの格納されているデッキに向った。 通路に姿を現した沙慈に気が付き止まる。 既に彼もパイロットスーツを着用している。 初めての出撃が緊急事態だったとはいえ、他に搭乗できるものもいず、彼自身訓練を受けたわけでもなかったがその後もオーライザーのパイロットを続けている。 今回は兵器の破壊ミッションではない。 人間が操作する人型のモビルスーツが相手となり、動きもより複雑なものになる。 乗りたくはないだろう。 沙慈の表情は暗い。守るため、兵器を壊すため、人を撃つこととは違うと自身に言い聞かせていたかもしれない。 「引き金は引けない、叫び続けることしかできない」 沙慈の言葉に刹那は頷く。 (それでいい) 攻撃することだけが戦いではない。 願いの強さは原動力となり、誰よりも早く力強く飛ぶ為の翼を羽ばたかせる。二人なら飛べる。 変わりたい、守りたい、もう失いたくない。その気持ちが刹那にも今は分かる。 叫びが届けば変わるものがあるかもしれない。 だから壊すのはこれが最後。 迎え撃つ無数の赤い機体。 その中にルイス・ハレヴィの乗るアロウズ、カスタムアヘッドの姿は見えない。 沙慈の見つけた二つの隕石。不自然な動きにプトレマイオスの危機を知りダブルオーライザーは駆ける。 迷彩を解かれた2機のアヘッドが姿を現した。 (ルイス・ハレヴィ) 砲撃体勢に入ったプトレマイオスを確認する。 二人は同時に叫んだ。 飛び込み割りこんだダブルオーライザーの機体にプトレマイオスは沈黙を続ける。 制止の声は届き、彼等は再会を果たした。 ルイス・ハレヴィの混乱。そしてもう1機のアヘッド機の介入。トランザムの限界時間からダブルオーライザーは撤退を余儀なくされた。 刹那は自身も引かれる思いを抑え機体を翻す。 そこへ2機の間を割るようにソーマ・ピーリスの乗るGNアーチャーが飛び込んできた。 怒りを露わに、素早い動きで攻撃を始める。撤退を始めた機体を追う彼女はアレルヤの必死の制止にも反感の色を示す。 4ヵ月前悲しみに再び姿を現した彼女は怒りの矛先を今あのアヘッドに向けている。マリーと呼ばれていた時の穏やかさはなく、激しい性格をしているが、今彼女を動かしているのは途方もない悲しみだった。 それを止めたいアレルヤ、二人の姿は刹那の目にも痛々しく映る。 そして沙慈の叫び声が彼女を止めた。 戦いを知らなかった者の声が、平穏を知る者の声が、戦うことしか知らない自分たちへ語りかける。 『あの頃に戻ろう。何もかも穏やかだった日常へ』 ルイス・ハレヴィに向けられた沙慈の言葉が甦る。 時間は巻き戻らず、同じ場所には戻れない。それでもまだ間に合う、きっと。 |