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 アレルヤはきれい好きでセックスの前には多分やけにご丁寧に隅々まで磨いてくる。
 滑らかで、乾いているのにどこかしっとりとした質感で、髪に鼻をうずめたりすれば柔らかな感触と清しいシャンプーの匂いが心地良い。
 心地良いけれど時折もの足りなさを感じ、ロックオンはしばし訓練を終え部屋へ戻っていくオレンジ色のスーツを捕まえ引きずり込む。

 アレルヤを誘うのは強引さが大事だ。
 似たような体格に見え、実は腕力は全く歯が立たないことをロックオンは知っている。
 通路の向こうをアレルヤが横切った。ああ、ちょうどいい時にと、ロックオンはそれを追う。
 アレルヤはロックオンに気付かず居住ブロックに入っていく。離されぬように距離を縮め、見計らう。
「アレルヤ」
 振り向いたアレルヤが微笑んで、
「今終わったんですか?」
 なんて言うのはいつものことで、
「ああ、お前も?」
 と言ったところで目の前に立ち、
「じゃあ後で夕食一緒に行きませんか」
 頷いてそんな誘いをかけるアレルヤが、この後暇なことが分かれば、しめたものだ。
 ロックオンは鷹揚に頷いて、きびすを返そうとする体におもむろに腕を回す。
「ロックオン?」
 きょとんとした顔が、ああ可愛いななんて思いながら、”ちょうど”部屋の前で立ち話になっているのをいいことに後ろ手にロックに手を掛ける。
「腹は減ったが、それよりもっと満たしたいものがある」
 えっという、アレルヤの声が続く前に、力任せに部屋に引きずり込む。
 なかなか上手くいった。

 勢いあまって転びそうになるのを堪え、踊るように体を反転させ、足の縺れたアレルヤをベッドに突き飛ばす。
 慌てて手をついたアレルヤに、即座に形勢を立て直しロックオンは乗り上げる。
「ロックオン危ないよ」
「悪いな、我慢がきかない男で」
 しらと言い、パイロットスーツに手を掛ける。
「あっ、ね、僕今汗かいてるし」
 慌てた様子でロックオンの腕を掴むアレルヤの手を、持ちあげてキスをする。
「俺は気にしないぜ?」
「僕は気にする」
 反対の手でスーツを寛げる。
「アレルヤは何にもしなくていいからさ。頼むぜ、黙ってお前を貸してくれ」
「ロックオン!」
 起き上がろうとする肩を押しやって、前を広げぴたりとしたインナーを引っ張り出す。
 鳩尾に舌を這わすとアレルヤの肩が揺れた。
「アレルヤの味、しょっぱいな」
 腹の上で笑って、顔を上げると、アレルヤが眉をへの字にしてこちらを見ている。
 伸びあがって唇にキスをする。
「冗談だって。そんなに一気に塩分出るわけないだろ?」
「ロックオン」
「それに、そんなに簡単にお前の味が分かってたまるか」
「ロックオン!」
 アレルヤが声を荒げる。
「じっくり味わんなきゃだよな」
 笑いながら、ロックオンは体を起こし体重が僅かに浮く。
 アレルヤは咄嗟に腕を掴み、易々と体の位置を入れ替えた。
「アレルヤ」
 きょとんとした顔を作って覆い被さるアレルヤを見上げると、噛みつくような勢いでキスが落ちてくる。
 ああ上手くいったと、ロックオンは腹の中でごちながら、アレルヤの首に腕を回す。
 アレルヤの手がロックオンのパイロットスーツに掛る。
 抱き寄せられる腕を振りほどくように、せっかちに前を寛げ、引っ張るように腕を抜き、ぐいぐいとインナーをたくしあげ、こちらも引っ張り抜く。腰にわだかまるやや硬いスーツの布をやはり力任せに引き下ろす。
 煩わしさに、左足を抜くのを諦めたアレルヤがロックオンにもう一度覆い被さる。
 腹に、胸に舌が這う。くすぐったさに笑いそうになるのを堪えて、髪を撫でる。
 這いながら下降するそれが、腿の付け根の窪みを撫ぜる。
 アレルヤがふと顔をあげロックオンを見た。
「ロックオン、しょっぱいよ」
 不思議な発見に遭遇した子供のように、目を丸くしたアレルヤにロックオンは堪え切れず笑う。
「汗が溜まってたかもしれない。悪いな、汚いだろ?」
「そんなことない、あなたの味です」
 アレルヤの舌がもう一度同じように這う。確かめるようにもう一度。
 嫌だというアレルヤをからかった仕返しのつもりなのだろう。
 可愛いことをしてくれる、とロックオンは思う。
「塩味だから、ぶった切って焼いたらうまいかもな」
 動きが止まる。
「お前より肉もついてるし、意外といけるかも」
 アレルヤの目が泳ぎ、そのあと心底嫌そうな顔でロックオンを見上げた。
「食べませんよ」
「じゃあ俺が食う」
 アレルヤのスーツを掴み、体を起こすようにして唇に噛みついた。