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 ティエリアの個人端末の受信に気がつく。それは彼の体と共にプトレマイオスに回収されてここにはない。
 通信はライル・ディランディからのもので、その数値の羅列は一瞬でティエリアを通り過ぎたけれど、わざわざ追うように反芻し、彼は笑んだ。
 それはライル・ディランディの手紙。


 ティエリア、あんたが居なくなったことが俺は未だに信じられない。
 人間の精神が…あんたがイノベイドという存在だってことは刹那に聞いたけど、体を持ち、そこに精神を宿した者が機械を拠り所に生き続けるなんて、どんなおとぎ話だろう。
 でもそれを、言ったのが刹那だから、俺はそれが冗談なんかじゃないことを知っている。あいつはそんなことを言うやつじゃない。
 でも正直、冗談が過ぎると俺はあいつを怒鳴りそうになった。
 俺の愚かしさはあんたも知っての通りだが、まだ消えるのかと俺の背中は本当に凍ったんだ。
 穴だらけの体に穏やかな白い顔。目の当たりにした死を認めることも、その体の持ち主の生を認めることも俺には容易ではなかったんだ。

 俺たちの窮地を救ったトライアルシステムの稼動。
 あの時あんたはもうあんたの体を空にしていたなんて、俺は思いもよらなかった。
 ヴェーダを通じて、俺の状態を知っていたかもしれないけど、俺はあの時、まさしく窮地だったんだ。
 でも、あんたのおかげで俺はあいつを討てた。
 あんたには感謝している。最初から最後まで、出来ればこれからも。
 刹那や戦術予報士どのの話を聞いて、あんたがプトレマイオスに戻らないことは理解した。
 でも、あんたが一体となったヴェーダは世界と繋がっているって、それも分かったから、俺はあんたに言いたいことがあったけれど、話す方法が見つからないから、こうして手紙を送る。
 一方的だけど、あんたのヴェーダがいつかこれを受信した端末に気がつけばいい。

 刹那が言ったんだ、あんたは俺達を見守っているって。
 だから俺は思ったんだ。ロックオン・ストラトスという男のよるべを、あんたに知っていて欲しい、って。
 俺はあんまりあそこに行けそうにないから。もちろん花を手向けろと言ってるわけじゃない、ただあそこを思ってくれている人がいてくれたら、俺はそれがあんたであって欲しい。
 あんたが俺達を見守ってくれると言うなら、俺の大事な場所もついでに見守ってくれると助かるよ。
 あれが空の器と知っているけれど、それでも紛れもなく俺達の大事な場所だから。


 ヴェーダに絶えず流れ込む情報の中で温かな光を放つ、ライル・ディランディの手紙を綴る数値の羅列。
 それと一緒に示された一つのポイント。
 そこは、ロックオン・ストラトスという魂のよるべ。
 望まれるのなら、永久に見守ることをティエリアは誓う。